「美しい絵の崩壊」のあらすじ、感想、見どころ

映画

リルとロズのふたりは子供の頃からの親友で、同じ海辺の街で生まれ育って同じ学校に通いながら成長していきました。時が流れて年齢を重ねていく中でも、その友情は決して変わることはありませんでした。リルの夫であるテオが突然の交通事故によってこの世を去った後でも、ロズの夫であるハロルドやふたりの息子を交えながら家族ぐるみでの付き合いが続いていました。

ハロルドはシドニーへの大学の転勤が決まったことによって、妻と息子のトムのために都会で見つけた家への引っ越しを薦めていました。長い間暮らした風光明媚な土地とリルたちと離れ離れになりたくないために、結局ロズはトムと共に残ることになりました。

ある日の夜にリルの息子であるイアンがロズに対して以前から抱いていたほのかな思いを告白することによって、ふたりは道ならぬ恋愛へと陥っていきます。自分の母親と親友との一線を越えた関係性を鋭く察知したトムは、当て付けのようにリルと愛し合うようになっていきます。

イアンはリルの会社で働き始めますが、ロズとの関係は相変わらず続いています。トムは演出家を目指すためにハロルドのつてを頼ってシドニーで活動をしていましたが、舞台女優のメアリーと出会って恋に落ちていきます。程なくトムとメアリーは結婚式を挙げることになり、イアンはパーティー会場であった女性のハナに惹かれていきます。

息子たちの結婚によってそれぞれが祖母となったリルとロズは、孫たちを交えながら幸せな日々を送っていました。一度は断ち切ったはずのリルとトムの秘密の関係は、結婚後も密かに続いていました。ふたりの密会を偶然にも目撃してしまったイアンは思わず激昂して、メアリーとハナの前で全てを暴露してしまいました。夫と義理の母親との異常な関係に嫌悪感を抱いたメアリーとハナは、子供たちを連れて家出を決行します。残されたリルはトムの恋人として、ロズはイアンとふたりで生きることを決意しました。

感想、レビュー

リルを演じているナオミ・ワッツとロズに扮したロビン・ライトの、年齢を重ねていくごとに美しさを増していくふたりの女性の妖艶な演技に惹き込まれていきました。倫理的には許されることのない恋愛模様にも、何処かピュアなお互いへの想いを感じることができます。ストーリーの舞台に設定されている、海沿いの開放的な道やコロニアル様式の街並みが美しさ溢れていました。

豊かな自然に囲まれた風景と共に、地方都市に特有な異質な存在をあっさりと排除してしまう閉塞感も伝わってきます。都会であれ田舎であれ、好きな人と好きな場所で暮らすことが何よりも大事だと考えさせられました。

一度は生まれ育った故郷を去ることを決意した若いイアンとトムのふたりが、何かに吸い寄せられるかのように舞い戻ってしまうシーンが印象深かったです。妻と子供たちに囲まれた世間一般の価値観からすれば幸せな生活を投げ捨てて、自分自身の思うままに生きていくことを決断したクライマックスには強く心を揺さぶられました。/Hu

美しい絵の崩壊
監督:アンヌ・フォンテーヌ
公開日:アメリカ2013年、日本2014年
キャスト:ナオミ・ワッツ、ロビン・ライト、ゼイヴィア・サミュエル、ジェームズ・フレッシュヴィル、ベン・メンデルソーン
1時間52分

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